レーシック体験記（4）　手術当日　その1

あらかじめ文書で、手術当日の注意事項として、整髪料などを使用しないことと（揮発物質がレーザーに影響を与える場合がある）、タートルネックやセーターなどの、服を脱ぐときに目に負担がかかるおそれのある服は、控えるようにという指示がありました。女性の場合はお化粧もだめだそうです。そして、いつもの診察の時は、前日に予約確認のメールがクリニックから届きますが、手術の前日には念入りに、確認の「電話」が携帯にかかってきました。
手術の時間は午前10時半です。受付で診察カードを渡すと、お薬とコップ一杯のお水を渡されました。「精神安定剤ですので、これを飲んでください」。カバンは受付で預かってもらいます。財布や鍵、携帯などの手荷物は、ジッパー付きのビニル袋を渡され、それに入れておくように言われました。もちろん、携帯の電源は切っておくようにと。
手術室の控え室に入り、手荷物の袋を預け、メガネを外し、頭にシャワーキャップのようなものをかぶらされます。看護師さんが、そのかぶった上からしっかりテープ止めをします。そして、僕の名前をはっきりゆっくりと読み上げて確認し、フルネームが書かれたシールを服の上から肩口あたりにぺたっと貼ります。しばらく5分ほどそのまま待機。さっき飲んだ精神安定剤の効果かどうなのか、少しだけですが、熱いお風呂にしっかり入って出てきた時のような、ぽーっとした気分になりました。ただ前の晩、仕事で睡眠不足だったので、薬の効果かどうか、よくはわかりませんが。
看護師さんが、「緊張してますかー？」と、リラックスさせようと話しかけてくれました。「新神戸から三宮へ行くには、地下鉄だけですか？」　「もうひとつバスもあるんですよ」。みたいな話をしてたら、手術室にお入り下さいと声がかかりました。
20畳くらいの広さかなあ。そんなに広くはありません。やや薄暗い部屋に、最新の機械類と、スタッフが5人くらいいます。部屋に入るときにまたあらためて、大きなはっきりとした発音で、僕の名前を確認されました。部屋のまんなかには手術台があります。整体の時に使うようなソファっぽいベッドの上に、あお向けで横になります。頭の位置は、すっぽり安定するように、ドーナッツ型をしていました。ただ、この時点でメガネを外しているため、それほど室内の様子がはっきりわかったわけではないですが。
胸から足に毛布を掛けてくれます。顔には眼の部分が空いているシートをかけられ、これもテープでしっかり止められます。目の前に機械が現れました。たぶんレーザーが出てくる機械なんでしょう、白いLEDがいっぱい付いていて、顔を照らしています。緑のLED光も見えています。それ以外は何も見えません。頭の上の方向に執刀医の先生もいますが、ぜんぜん見えません。先生の声と、助手の人が機械のステータスを読み上げている声だけが聞こえます。
右目から開始です。まずは麻酔の目薬をさされます。すごく目にしみる薬ですが、何度かさされているうちに、しみなくなってきます。5回ほどさされると、何も感じなくなってきて、麻酔が効いた状態になりました。そして、まぶたに器械をぐっと差し入れて、目が閉じないように固定されます。この時点で麻酔は効いていますが、目は見えますし、眼球を動かすこともできる状態です。続いて、わっか状の道具が目におさえつけられ、眼球が固定されます。
エピケラトームという、角膜から薄い膜を取る作業だそうです。なんか、うーんという機械の動作音がして、さわさわしたものが目に触れました。ちょっとこのとき眼球を動かしたかもしれません。が、その後はまっすぐ上を向いているようにひたすら我慢しました。その間、視界は白く半透明になっています。15秒くらいで終わりました。視界が戻りました。
次にレーザーを当てていきます。多少頭の向きを微調整され、真正面の緑の光をまっすぐ見て、動かさないようにと指示がありました。「はい、いきますよー」、という先生の声がすると、目の前に赤いレーザー光がちらちらと光り出しました。全然痛くはないですが、目を動かしてはいけないというのが、緊張感があります。あれ？　髪の毛がこげるにおいがしてきた。はい、そうですね。髪の毛ではなく角膜がレーザーで焼かれているにおいです。これがほんとの目玉焼き。
その間長くても1分くらいだったと思います。レーザー照射が終わると、もう目の前の白いLEDが、さっきよりはっきり見えています。終わると水をぴしゃーとかけられ、目薬を4種類くらい素早くさされて、コンタクトレンズを装着されました。続いて左の目。内容はまったく同じ作業です。2回目はちょっと気持ち的に慣れてきました。
手術時間のトータルは正味20分くらいでしょうか。「はい、終わりましたよ。おつかれさまでした」。看護師さんに手をひかれながら立ち上がると、もう部屋の景色がさっきよりはっきりと見えています。手術室を出て控え室に入り、頭のキャップを取り、手荷物を受け取ります。そしてすぐに診察室に。