ちょっと前から「ニセ科学」の問題に興味を持ち、本やネットで勉強しています。なるほどそうだったのかという発見がいくつかありました。少し以前の自分に向けて説明するようなつもりで、ニセ科学のQ&Aをまとめてみました。
●ニセ科学の定義とは?
科学を装っているけど、実は科学ではないもの、のことです。
●ニセ科学の代表例は?
・血液型性格診断
・マイナスイオン
・EM菌
・ゲーム脳
・水からの伝言
・ホメオパシー
・(ブームとしての)脳科学
●神秘的なものを全て否定するんですか?
そうではありません。例えば僕も、神社にお参りするしお守りを買ったりします。UFOや幽霊の存在をなんとなく信じていたり、手相をみてもらったり、血液型性格診断を話題に出したりします。
問題なのは、科学的根拠があるかのように「装っている」という部分です。例えば、神社のお守りが、こういう科学的根拠があるから、こういう効能があるんです! という風に虚偽の宣伝をされて売っていると、ちょっと違うと思いませんか?
神秘やオカルト・スピリチャル的なものを、そのままの形で、それはそれとして受けとめている分には問題がないと思うのですが、科学的な根拠があるかのようにウソをつかれると、様々な問題が発生してしまいます。
●世の中には、科学で解明できないものもあるのでは?
もちろんイエスです。例えば超伝導などは、その現象が発見されてから、50年ほどそのメカニズムが解明されませんでした。現象や作用は確かにあるけれども、その作用機序(メカニズム)が分からないものもあると思います。
ですが、客観的で再現可能な事実がないにも関わらず、それがあると主張したり、科学のフリをしているけど、科学としての条件を満たしていないものが問題なのです。
●科学は絶対ではなく、科学にも誤りがあるのではないか?
これもイエスです。ですが、「科学的に導かれた結果は100%絶対である」、という風に考えているわけではありません。科学的な「方法論」、科学的な「考え方」、科学的な「手続き」、そういったものがきわめて「有効だ」と考えているということです。
そういった「科学的」なものの有効性と、「科学にも誤りがある」ことは別の話です。あるいは、科学の誤りを科学によって修正してきたというのも、科学の歴史です。
●ホメオパシーで病気が軽くなったという人の話を聞いたんですが?
そこには、「個人的体験」と「客観的事実」の混同、という問題があるように思います。確かにその人は、病気が軽くなったんでしょう。ただ、病気が軽くなった原因は、他にもあるかもしれません。例えば、同時に飲んでいた薬が効いたのかもしれないし、運動をするようになったことが改善の原因かもしれないです。あるいは、そもそも何も飲まなくても、時間の経過により回復した病気だったのかもしれません。
そういった個人的体験は、客観的事実とは「切り分けて」考える必要があります。客観的事実が存在すると証明するには、疫学調査が必要になってきます。ニセ科学を判断するときには、疫学的思考が有効です。
●疫学的思考とは
神社でお賽銭を10円しか入れなかった時は宝くじにあたらなかったけど、奮発して1万円入れたら10万円の宝くじに当たったとします。これをご利益があったと信じるのは勝手なのですが、これをもとに、他人に「必ずご利益があるからあなたも1万円入れなさい」と勧めていいか。・・・これははっきりとしていますよね。
疫学の考え方では、
(A) 祈った→効果があった
(B) 祈った→効果が無かった
(C) 祈らなかった→効果があった
(D) 祈らなかった→効果が無かった
の4パターンの人数を調べます。
祈った結果、効果があった人(A)と無かった人(B)を比べるだけではダメなんですよね。そのA:Bの比率が、祈らなかったけど、効果があった人(C)と無かった人(D)の比率、C:Dと比べてどうかということを見なければいけない。
もしかすると、お祈りをしなくても、宝くじに当たる:当たらないの比率は同じかもしれないからです。もしそうなら、お祈りの効果はないと結論づけられます。一方、体験談というのは、(A)のパターンだけを数えていますから、何の証明にもなりません。
●騙される人が馬鹿なだけの話では?
山口市の女性がホメオパシーを信じる助産師の指導のもと、長女を自宅出産しました。新生児にはビタミンK2シロップという、新生児の出血症を予防する薬を通常与えるのですが、その助産師は、同じ効果を持つとされるホメオパシーの薬品を与えて、母子手帳には「ビタミンK投与」と虚偽の報告をしていました。
その結果、赤ちゃんは生後2ヶ月でビタミンK欠乏性出血症による硬膜下血腫が原因で死亡しました。「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」と呼ばれる事件です。
ニセ科学を信じるあまり、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざけてしまうことが非常に問題と考えられています。ダメな治療法を選択することで、患者が効果的な治療を受ける機会を妨げた場合、それが善意で施されたものであったとしても、結果的にはその患者の命を奪うことに加担することになります。
ニセ科学を選択することは、単に自己責任の問題にとどまらず、様々な「社会的損失」を招いてしまいます。意味のないものを作るにしても、意味のあるものを作るにしても、どちらも人手・お金・時間がかかります。こういった社会資本を無駄に使うよりは、意味のあるものに使うほうがいいよね、という話です。
●個人にとってニセ科学知識を身につける大事さ
そういったリテラシーを身につけることにより、
・インチキ商品を騙されて買うことがなくなるので、かしこいお金の使い方ができる。
・上手い儲け話にも騙されない。
・本当に効果のある適切な医療を選択することができる。
・不安や恐怖をあおる情報に対して、冷静で落ち着いた判断ができる。
●希望が科学の使い方をゆがめてしまう
僕も以前、冷え性に悩まされていた時期があって、薬局で買った漢方薬とか鍼灸とか、いろいろ試していました。けれど、実際に効果があったなあと思ったのは、お風呂に毎日しっかり入ることと、ジョギングを定期的に続けることでした。
薬局の漢方薬や鍼灸を否定しているわけではないのですが、はっきりとした病名のつかない、なんとなくの体の不調があった場合に、これを飲めば治るとか、これを受ければ治るとか、お金をだせば解決する、ある種お手軽なものがあったとしたら、それに飛びつく気持ちはよく分かります。
マイナスイオン、EM菌、ホメオパシーなどもそうで、そういう便利なものが本当にあれば、どんなに良いことかとは思いますが、「信じたいこと」と「信じてよいこと」は、しっかりと科学の目で区別しておかないと、結局のところ自分の不利益につながりますし、それを放置しておくことは、社会の損失になるのだろうと思います。
■参考図書
もうダマされないための「科学」講義
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へへへ、俺は騙されないぜ!
と思ってるので、自分が非常に危険w
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危険w、と思ってる人は大丈夫でしょう。
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初めまして。マイナスイオンについて詳しく調べているssfsと申します。ニセ科学の代表例にマイナスイオンを掲げていますが、それはどういう根拠に基づくのでしょうか。マイナスイオンは空気中に存在し、多くの科学的な文献があります。マイナスイオンを応用した家電商品は多くのユーザーにその効果が認められ、白物家電で確固たる地位を固めています。もう一度うかがいますが、何をもってマイナスイオンをニセ科学扱いするのですか? ちなみに阪大の菊池氏は不勉強なまま、マイナスイオンをニセ科学と決めつけ、あちこちで喧伝しています。学者らしくない偏った態度であり、日本における知の退廃の一側面を象徴しています。
マイナスイオンについてはこちらの知恵ノートで一般的な説明をしています。ぜひご覧ください。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n16155